12-25.09.07『いい人も悪い人悪い人もいい人』

旅のエッセイ
このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。

12-25.09.07『いい人も悪い人悪い人もいい人』

昨日ほどんど食べていなかったこともあり、身体がすぐに疲れてしまう。
階段の昇り降りだけで息が上がる。
昨日よりは元気になったものの、まだ胃もキリキリと痛む。

2日間朝から降り続いた雨は上がり、生憎出発の日の今日は朝から晴れ。
あんなに洗濯物が乾かなくて困ってドライヤーで頑張ったのに…そして寒すぎてシャワー入れなかったのに(水しか出ないから)なんか悔しい。

出かけなければもったいないので、重い腰をあげ、地下鉄でカーリー寺院へと向かう。
地下鉄は混んでいたけど思ったほどではなく、時間帯もよかったのか埼京線よりは快適に乗れた。

インドの電車の切符は紙ではなく、プラスチックのメダルのようなもの。なんかかわいい。
カーリーにつくと、もう誰がいい人なのか、面倒な人なのか分からず、靴を預けて大丈夫なのか信用もできず、(体調悪いから余計億劫)
しかもお参りの時に靴を脱ぐのは当然分かるけど、えっここで脱ぐの?!みたいな、靴も裸足も混在している寺院から距離のある場所で言われ、その時はどうしても業に従う気になれず私はパス。
普段はこれくらいのことなら業に従うのに、なんか今日はそれがすごく嫌だった。
もったいない気もするけど彼だけ中でお参り。
私は外からお祈り。
昨日まであんなに寒かったくせに、今日はなんなのさっ!てくらい暑くて、まだ本調子じゃない胃もまだキリキリと痛む。

お参りを済ませてサダルストリートへと戻り、宿の近くの屋台でライススープ(お粥のようなもの)が食べられるところがあるので、お粥を頼む。
お腹を抑えていると、店主のおっちゃんが、私がお腹を壊していることに気づいてくれて、今日はラッシーと卵はダメだよ、と、優しく教えてくれて(やっぱり卵もいかんのか…一昨日までめっちゃ食べてたよ)、本来油も使って作るライススープをノーオイルで作ってくれた。
優しさに感謝(/ _ ; )
食べたら胃の痛みがだいぶ落ち着いてきた。

今日は夜行列車でガヤへ向かう。
それまでに回復するといいな。

インドに来てまだ数日だけれど、気づいたことがある。
詐欺師といい人は紙一重。
騙すために安心させようといい人をやっているのか、ほんとにいい人だけど隙があれば取ろうとしているのか、それは分からない。
根っからのいい人ももちろんいると思うけれど、その場合、向こうから話しかけてくることはないと思う。

大阪弁の喋れるインド人のさとし曰く、昨日私に薬をくれた人は昔詐欺師だったらしい。
彼も昨日、私がお留守番をしている中再び夕方一人で行ったときには、デルティカルストーンっていう、インド人は必ず持っていて、持っていると幸せになるという石をしきりに進められたらしい。
もちろん買わなかったけど。
インドは紹介するとバックマージンが入るから、あれよあれよと色んなところを紹介される。

その昔詐欺師だった方が今日の夜行列車の電車のチケットをとってくれると言っているのだけど、なかなか取れず(席が決まらず)今日も何度も足を運ぶ。
私はお留守番していたけど、彼はいくたびにかなり待たされていたらしい。
疑わしい(笑)
次に向かうガヤでその人が紹介してくれた人が、駅まで迎えに来てくれるとのこと。
大丈夫なのだろうか…。

迎えにきた人に渡してくれと空のバッグを4つ渡された。
ただのバックじゃなかったらどうしようと、変なものを運ばされていないか中身を全てチェックしてしまった。

いい人なのか、何か裏があるのかは分からない。
もはや全てどっちだかわからないと言っても過言ではない。
騙されるか、騙されずに親切にのみありがたくお世話になれるかは恐らく自分次第。

いらないものはいらない。嫌なものは嫌としっかり伝えること。
こんなにしてもらったのに…は考えなくてよし。
お世話になった分、他に困ってる人がいたときに助ければいい。
それが詐欺にあわないコツな気がした。

—From the present me


インドに来て数日で得たこの感覚はこの後もずっとそうだった。
値段をふっかけてきたり、騙してこようとしているんじゃ…?と思うことはあるのだけれど、なんだか根本から悪い人という感じはずっとしない。
全てこちらの対応次第で相手の対応が変わっていくという感覚がずっとあった。
この、介抱してくれた人たちが本当はどういう人たちかはわからないけれど、少なくとも私はこの時すごく助かった。

日本にいても、気は進まないのに「いつもこうしてもらっているから」などそのこととは別の感情で気が進まないことをやってしまうこともある。
けれど、ベースにその人が好き、があれば気が進まないことは進まないと伝えてしまった方がいいのかもしれない。
それで壊れてしまうならばそれまでの関係だっただけ。
その時、その時にちゃんとその人に向き合う。
インドの人たちは、ちゃんとその時その時を生きている感じが、当時、そして今の私よりもすごくしたんだ。

コメント