このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。
12-25.07.18『フエ→パクセー 混沌と優しさと所狭しレモン』
朝7時に来るはずのピックアップバスが、…来ない。
シェムリアップやプノンペン、ニャチャン、フエと、旅の節目でいつもギリギリに会って見送ってくれたカンボジアの仲間も、眠そうな目をこすりながら見送りに来てくれているのに。
王宮観光に行くという別の仲間も一緒にお待たせしてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱい。
結局バスは20分遅れで到着。
カンボジア仲間の彼との海外での偶然の再会もこれで終わり。少し寂しくなりながら、「また東京で!」と手を振ってバスに乗り込んだ。
バスターミナルに着いても、パクセー行きのバスはなかなか来ない。
やっと来たのは1時間後。トイレは汚い上に有料。乗ったバスはツーリストバスではなく、地元のベトナム人ばかり。
ドキドキしながら席に着くと、足元には…レモン!
袋に詰め込まれたレモンが20袋以上、座席の間や通路にびっしり。
シェムリアップやプノンペン、ニャチャン、フエと、旅の節目でいつもギリギリに会って見送ってくれたカンボジアの仲間も、眠そうな目をこすりながら見送りに来てくれているのに。
王宮観光に行くという別の仲間も一緒にお待たせしてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱい。
結局バスは20分遅れで到着。
カンボジア仲間の彼との海外での偶然の再会もこれで終わり。少し寂しくなりながら、「また東京で!」と手を振ってバスに乗り込んだ。
バスターミナルに着いても、パクセー行きのバスはなかなか来ない。
やっと来たのは1時間後。トイレは汚い上に有料。乗ったバスはツーリストバスではなく、地元のベトナム人ばかり。
ドキドキしながら席に着くと、足元には…レモン!
袋に詰め込まれたレモンが20袋以上、座席の間や通路にびっしり。

レモンを足で踏みつけるしかなくて申し訳ない気持ちに
ここに座れと案内してくれた席にもレモン、そして砂利。
案内してくれたにーちゃんが砂利を払ってくれたけど、あまりの状況に「ありがとう」の言葉が出なかった。
荷物運びと人を一緒に運ぶのは、アジアではよくあることらしい。
バックパッカーの彼は慣れた様子で余裕を見せていたけど、このバスは尋常じゃなかった。
バスターミナルや道端で何度も止まり、荷物がどんどん積み込まれる。通路は荷物で埋まり、床が見えるのは乗り場だけ。
7時のピックアップから2時間経っても、まだ王宮前を走っているなんて…。見送ってくれた仲間はもう王宮観光を終えているかもしれない。
一体何時に到着できるのか。心配半分、ぶっ飛んだ状況に楽しくなってきた半分。
このバス、いや、運送車は朝食休憩どころかトイレ休憩もほとんどない。
荷物の積み下ろしの隙に勝手にトイレに駆け込むしかない。「今だ!」と思って行ったら、遅い!と怒られバスも発車しかけていた。
そしてボーダー。英語が話せるにいちゃんが「これ書け」「1ドル渡せ」と助けてくれて、なんとか通過。
やっと昼食の時間だ。長丁場だからしっかり食べようと思ったのに、私たちはラオスの通貨kipを持っていない。
ドルやドンでもいいと言われたけど、お釣りをくれない店員にカチンと来てしまって、結局お菓子で凌ぐことに。
ボーダー越え後の休憩で、市場のような場所に停まった。
トイレに行きたかったけど場所が分からずおろおろしていると、バスのおばちゃんが手招きして連れて行ってくれた。
有料トイレだったけど、またしてもkipがない。諦めかけた瞬間、おばちゃんが私の分まで払ってくれていた!
「来なさい」と笑顔で手招きしてくれて無事終了。
その時トイレに行ったのは私たちだけ。
それから数分後、別の停車で男性陣が立ちしょん、女性は森の影で用を足しはじめた。
おばちゃんはきっと私に合わせて有料トイレに行ってくれたんだ。
その後もトイレに困るたび、おばちゃんの後をついて行った。
ついに草むらデビューも果たしたけど、犬が寄ってきたりもして、一人じゃ絶対無理だった。おばちゃんには感謝しかない。
やっと22時前にパクセーに到着。
降りる時、乗客の女性が「よく頑張ったね」と優しい笑顔で話しかけてくれ、ホテルの方向まで丁寧に教えてくれた。
バスの運転手も笑顔で見送ってくれて、なんだか温かい気持ちに。…と、浸っていると…
…ん?!
彼のリュックがくっさい!!
生ゴミのような異臭!!!!
荷物の積み下ろしやバス上部への固定の過程で、何か不幸が起こったらしい。
背負うしかないけど、彼の後ろを歩くだけで臭う。
教えてもらったホテルは高く、英語も通じず断念。
『地球の歩き方』を頼りに別のホテルへ向かうも、現在地が分からない。
片付け中のレストランのおっちゃんに聞くと、英語が分からない彼はわざわざ若い子たちを呼んでくれた。
その若者たちがめっちゃいい人で、手書きの地図まで書いてくれた。
集まってきた子どもたちも可愛くて癒される。
バイクで送ってくれるという申し出を、請求を警戒して断ってしまったけど、5分歩いたところで彼らがバイクで追いかけてきてくれた!
「遠いから乗りなよ!」と。
優しさに感激しながらも心の汚れた私たちはまだお金の心配をしていたのだけど、結局無料でホテルまで送ってくれて、
「良い旅を!」と爽やかに去って行った。なんて素敵な人たち!
お金の心配ばかりしていた自分が恥ずかしい。
どうか彼にリュックの臭いが移っていませんように。
ホテルはドミトリーしか空いてなかったけど、2床空いていてラッキー。
お腹もぺこぺこだったので閉店間際のインド料理屋に駆け込んだ。
これまたきっと本当は締めるところだったのに、野菜チャーハンと焼きそばならできるぞ、と準備をしてくれた。
ようやく今日初めてのちゃんとしたご飯。
一息ついたのも束の間。今日はまだ終わらない。
…リュックの臭いと向き合う時間だ。
本当に臭い。
中の荷物にも臭いが染み、彼のノートや小説が特に被害を受けた。
ノートはまだ使っていないのに、それでも彼は「乾けば使える」と捨てなかった。
私は洗えないものにアルコールスプレーをかけてなんとか除菌できないかと試みていた。そうしたら「もったいない」と文句を言われ、疲れもあってつい言い争いに。
疲れている時に優しくなれないのは修行が足りない以外の何者でもないのだけど。
リュックが臭くなった以外は本当に感謝でいっぱいの1日だったな。
本当に、リュック臭くなった以外は。
長い1日だった。砂利を払ってくれた時のバスのにーちゃんの顔も、トイレで助けてくれたおばちゃんの笑顔も、バイクで送ってくれた爽やかなにーちゃんの後ろ姿も、今も鮮明に残っている。
あんなに助けてもらったのに、今の私は困っている外国人に声をかけられず、「迷惑かな」「英語わからないしな」と躊躇してしまうことが多い。
言葉が通じなくても、気軽に「何かできる?」と聞いてみる勇気を持とうかな。
そんな小さな行動が、誰かの旅を少しだけ温かくするかもしれない。
案内してくれたにーちゃんが砂利を払ってくれたけど、あまりの状況に「ありがとう」の言葉が出なかった。
荷物運びと人を一緒に運ぶのは、アジアではよくあることらしい。
バックパッカーの彼は慣れた様子で余裕を見せていたけど、このバスは尋常じゃなかった。
バスターミナルや道端で何度も止まり、荷物がどんどん積み込まれる。通路は荷物で埋まり、床が見えるのは乗り場だけ。
7時のピックアップから2時間経っても、まだ王宮前を走っているなんて…。見送ってくれた仲間はもう王宮観光を終えているかもしれない。
一体何時に到着できるのか。心配半分、ぶっ飛んだ状況に楽しくなってきた半分。
このバス、いや、運送車は朝食休憩どころかトイレ休憩もほとんどない。
荷物の積み下ろしの隙に勝手にトイレに駆け込むしかない。「今だ!」と思って行ったら、遅い!と怒られバスも発車しかけていた。
そしてボーダー。英語が話せるにいちゃんが「これ書け」「1ドル渡せ」と助けてくれて、なんとか通過。
やっと昼食の時間だ。長丁場だからしっかり食べようと思ったのに、私たちはラオスの通貨kipを持っていない。
ドルやドンでもいいと言われたけど、お釣りをくれない店員にカチンと来てしまって、結局お菓子で凌ぐことに。
ボーダー越え後の休憩で、市場のような場所に停まった。
トイレに行きたかったけど場所が分からずおろおろしていると、バスのおばちゃんが手招きして連れて行ってくれた。
有料トイレだったけど、またしてもkipがない。諦めかけた瞬間、おばちゃんが私の分まで払ってくれていた!
「来なさい」と笑顔で手招きしてくれて無事終了。
その時トイレに行ったのは私たちだけ。
それから数分後、別の停車で男性陣が立ちしょん、女性は森の影で用を足しはじめた。
おばちゃんはきっと私に合わせて有料トイレに行ってくれたんだ。
その後もトイレに困るたび、おばちゃんの後をついて行った。
ついに草むらデビューも果たしたけど、犬が寄ってきたりもして、一人じゃ絶対無理だった。おばちゃんには感謝しかない。
やっと22時前にパクセーに到着。
降りる時、乗客の女性が「よく頑張ったね」と優しい笑顔で話しかけてくれ、ホテルの方向まで丁寧に教えてくれた。
バスの運転手も笑顔で見送ってくれて、なんだか温かい気持ちに。…と、浸っていると…
…ん?!
彼のリュックがくっさい!!
生ゴミのような異臭!!!!
荷物の積み下ろしやバス上部への固定の過程で、何か不幸が起こったらしい。
背負うしかないけど、彼の後ろを歩くだけで臭う。
教えてもらったホテルは高く、英語も通じず断念。
『地球の歩き方』を頼りに別のホテルへ向かうも、現在地が分からない。
片付け中のレストランのおっちゃんに聞くと、英語が分からない彼はわざわざ若い子たちを呼んでくれた。
その若者たちがめっちゃいい人で、手書きの地図まで書いてくれた。
集まってきた子どもたちも可愛くて癒される。
バイクで送ってくれるという申し出を、請求を警戒して断ってしまったけど、5分歩いたところで彼らがバイクで追いかけてきてくれた!
「遠いから乗りなよ!」と。
優しさに感激しながらも心の汚れた私たちはまだお金の心配をしていたのだけど、結局無料でホテルまで送ってくれて、
「良い旅を!」と爽やかに去って行った。なんて素敵な人たち!
お金の心配ばかりしていた自分が恥ずかしい。
どうか彼にリュックの臭いが移っていませんように。
ホテルはドミトリーしか空いてなかったけど、2床空いていてラッキー。
お腹もぺこぺこだったので閉店間際のインド料理屋に駆け込んだ。
これまたきっと本当は締めるところだったのに、野菜チャーハンと焼きそばならできるぞ、と準備をしてくれた。
ようやく今日初めてのちゃんとしたご飯。
一息ついたのも束の間。今日はまだ終わらない。
…リュックの臭いと向き合う時間だ。
本当に臭い。
中の荷物にも臭いが染み、彼のノートや小説が特に被害を受けた。
ノートはまだ使っていないのに、それでも彼は「乾けば使える」と捨てなかった。
私は洗えないものにアルコールスプレーをかけてなんとか除菌できないかと試みていた。そうしたら「もったいない」と文句を言われ、疲れもあってつい言い争いに。
疲れている時に優しくなれないのは修行が足りない以外の何者でもないのだけど。
リュックが臭くなった以外は本当に感謝でいっぱいの1日だったな。
本当に、リュック臭くなった以外は。
長い1日だった。砂利を払ってくれた時のバスのにーちゃんの顔も、トイレで助けてくれたおばちゃんの笑顔も、バイクで送ってくれた爽やかなにーちゃんの後ろ姿も、今も鮮明に残っている。
あんなに助けてもらったのに、今の私は困っている外国人に声をかけられず、「迷惑かな」「英語わからないしな」と躊躇してしまうことが多い。
言葉が通じなくても、気軽に「何かできる?」と聞いてみる勇気を持とうかな。
そんな小さな行動が、誰かの旅を少しだけ温かくするかもしれない。
明日の日記はこちらに続く。
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