このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。
12-25.06.20『事件と買い物、現実と思えていなかった”現実”』
昨日買ったばかりのズボンに慣れていなかったせいか、彼がバンコクに住んでいる弟の家へ向かうバスの中で、財布を落とした。
盗難ではなく、自分で落とすとは…。
循環バスだったので、同じバスが戻ってこないかと、待ち伏せたり、追いかけたりもしたけれど見つからなかった。
中身は約3000バーツと、免許証、カード。
金額としては日本円で7千円程度だけれど、免許証とカードが痛い。
幸い国際免許があるので車の運転には困らないけれど…。
弟くんの家についてすぐにWi-Fiを借りてカードをストップ。
タイに慣れている彼はタイに来てからずっと「大丈夫、大丈夫」と余裕の態度だったから、神様が“気をつけなさい”
と警告してくれたのかもしれない。
その分のお金なら、安いもの。
そう思って気持ちを切り替える。
昼過ぎまで弟くんの家で休ませてもらい、Wi-Fiも使ってから、スーパーにショッピングへ。
テレビから工具、食品、服まで、いろんなものが揃っていて、一周するだけでも結構疲れる広さだった。
日本の食品もたくさんあるけれど、やっぱり現地のものに比べるとかなり高い。
タイの物価から見れば「ぜいたく品」だけど、日本と同じ感覚で選べばわりと何でもそろう。
タイって、思っていたよりもずっと便利。
夜、街を歩いていたら、両目がない人が缶を持って座っていた。
両目のない人を見るのは初めてで、胸の奥がざわついてうまく気持ちの整理ができない。
見えないのと、ないのは、まったく違う。
お金を稼がせるために、塩酸で目を焼かれる人がいると聞いた。
その人自身にお金が入るのではなく、儲かったお金は“ボス”の元へ。
目を焼かれて、そこに缶を置いて座っていて、一日いくらもらえるんだろう。
そんなことのために、目を焼かれるなんて…。
インドはもっと過酷な現実があると聞く。
少し思いやられる気持ちになった。
今あらためて読み返すと、出発してわずか5日で財布をなくすなんて…と面白くなる。
この出来事が、のちにまたいくつかの事件につながることになる。
似たようなバスを探して追いかけたときの、あの焦燥感や街の温度や情景がふっと質感を伴って蘇ってきた。
目を焼かれた人に出会ったのは、この時が最初で最後。
小説の中の出来事だと思っていたことが、現実として目の前に現れた瞬間だった。
今も、こういうことが現実に起こっていて、昔はもっと確実に、頻繁に起こっていたんだ。
盗難ではなく、自分で落とすとは…。
循環バスだったので、同じバスが戻ってこないかと、待ち伏せたり、追いかけたりもしたけれど見つからなかった。
中身は約3000バーツと、免許証、カード。
金額としては日本円で7千円程度だけれど、免許証とカードが痛い。
幸い国際免許があるので車の運転には困らないけれど…。
弟くんの家についてすぐにWi-Fiを借りてカードをストップ。
タイに慣れている彼はタイに来てからずっと「大丈夫、大丈夫」と余裕の態度だったから、神様が“気をつけなさい”
と警告してくれたのかもしれない。
その分のお金なら、安いもの。
そう思って気持ちを切り替える。
昼過ぎまで弟くんの家で休ませてもらい、Wi-Fiも使ってから、スーパーにショッピングへ。
テレビから工具、食品、服まで、いろんなものが揃っていて、一周するだけでも結構疲れる広さだった。
日本の食品もたくさんあるけれど、やっぱり現地のものに比べるとかなり高い。
タイの物価から見れば「ぜいたく品」だけど、日本と同じ感覚で選べばわりと何でもそろう。
タイって、思っていたよりもずっと便利。
夜、街を歩いていたら、両目がない人が缶を持って座っていた。
両目のない人を見るのは初めてで、胸の奥がざわついてうまく気持ちの整理ができない。
見えないのと、ないのは、まったく違う。
お金を稼がせるために、塩酸で目を焼かれる人がいると聞いた。
その人自身にお金が入るのではなく、儲かったお金は“ボス”の元へ。
目を焼かれて、そこに缶を置いて座っていて、一日いくらもらえるんだろう。
そんなことのために、目を焼かれるなんて…。
インドはもっと過酷な現実があると聞く。
少し思いやられる気持ちになった。
今あらためて読み返すと、出発してわずか5日で財布をなくすなんて…と面白くなる。
この出来事が、のちにまたいくつかの事件につながることになる。
似たようなバスを探して追いかけたときの、あの焦燥感や街の温度や情景がふっと質感を伴って蘇ってきた。
目を焼かれた人に出会ったのは、この時が最初で最後。
小説の中の出来事だと思っていたことが、現実として目の前に現れた瞬間だった。
今も、こういうことが現実に起こっていて、昔はもっと確実に、頻繁に起こっていたんだ。
明日の日記はこちらに続く。
コメント
財布などを無くしたら、もう立ち直れないかも。
逞しいです。
ナマハゲさんコメントありがとうございます!
多分自分一人で自分がお財布無くしていたら立ち直れなかったと思います^^;
二人いたので私がなんとかすればいいか、と思えたのでよかったです。