12-25.06.15『中国の洗礼』

旅のエッセイ
中国・広州に夜到着。
そのまま空港で一泊して、翌朝のフライトを待つ予定だった。

しかし現実は…荷物をピックすると、全く説明のないまま、何人かでどこかに連れていかれることに。
空港のスタッフは英語をまったく使ってくれず、接客態度もゼロ。空港職員というより、大学のサークルのノリのような、へらへらした笑顔で対応される。

「え?ついていって」ってなんで?どこに?
何が起きてるのか、全くわからない。
同じように案内されていたアジア系のおじさんがいたので、思い切って話しかけてみる。
どうやら状況がわかっているらしい。

「これは中国南方航空の無料ホテルサービスだよ」と英語で教えてくれた。

えっ、空港泊のつもりだったのに、ホテルに泊まれるの?それって…すごくラッキー!!
頼みの綱のおじさんを信じて、ついていく。
終始空港職員からの英語の説明はなく、無言のままワゴン車に乗せられて、けっこう遠くまで……走る、走る。
……不安。かなり不安。

20分ほど経ち、ようやく車が停まった。
「酒店」と書かれた、思っていたより立派なホテル。

記憶をたどる。「酒店」って、けっこうちゃんとしたホテルのはず。
エントランスに入った。
やっぱりだ。ここでも英語は通じない。
たぶん話せる人もいるのだろうけれど、「相手が外国人だから英語で話そう」という気遣いは、どうやらないらしい。

「トゥゲザールームプリーズ」と伝えたのに、案内されたのはパートナーと別々の部屋。訳もわからぬ異国の地でいきなり一人は不安すぎる!

再度フロントに戻って交渉し、なんとか同じ部屋にしてもらえた。

それでも心配なのは、このホテルが本当に無料かどうか。
「マネーフリー?サービス?」と、拙い英語で何度も聞いて、やっと「Free」と聞き出せた。
ようやく安心して部屋に入ると、思っていた以上にきれいな部屋。
初日からこんな場所に泊まれるなんて、予想外すぎてびっくり。
でも……おなかがすいた。

夕食は空港で食べるつもりだったので、持っているのは、義母が持たせてくれたお菓子だけ。
今いる場所もわからないし、夜中に外へ出る勇気もない。中国元も持っていないし、外食も無理。

今夜は、お義母さんのお菓子だけが頼り。
本当にありがとう、お義母さん。

明日、無事に空港へ戻れますように。

あれよあれよという間にワゴン車に乗せられ、空港からどんどん離れていく時、今思い出しても本当に怖かった。

あのおじさんから「サービス」と聞いていなかったら、連れ去られるんじゃないかって、本気で思ってたと思う。

雨の夜、窓の外には漢字だらけの光る看板。
「酒店」で車が止まった時は、心からホッとした。

初日から、洗礼浴びまくり。
おつかれ、13年前のわたし。

明日の日記はこちらに続く

コメント