12-25.06.24『アユタヤ最後の日』

旅のエッセイ
  このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
  当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
  あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。

12-25.06.24『アユタヤ最後の日』

宿のスタッフに問題があったので、もう少しアユタヤに長くいるつもりが、早々に一度バンコクへ帰ることに決めた。
のんびり回るつもりだったから、今日は急ピッチで観光地を回ってしまおう!と彼がバイクを提案。

私は、昔から母親に「バイクにだけは乗らないで」と言われて育ったので大反対。
出発前から「乗りたくない」って言ってたのに!

バイクのほうが効率がいいのは分かってる。
でも、今まで守ってきたことを破るのがどうしても嫌で、私が譲らず。
もめにもめて、結局徒歩で回ることに。

行きはトゥクトゥクに交渉して、60バーツで寝仏のオカヤスタラム寺まで。
運転手さんはとても気さくで優しいおっちゃんだった。
そこから迷子になりつつ、
 
なんの寺院か分からないところを彷徨い歩いてた。

アユタヤはほんとに犬が多くて、こいつ絶対ヤバいやつでしょ…という、明らかに狂犬病っぽい顔の犬も結構いる。
昼間は基本的におとなしいけど、人が少ないような場所では、昼間でも吠えてくる。
迷子中、ひと気のない寺院でイスを見つけて座ろうとした瞬間、物陰から犬が2匹、吠えながら飛び出してきた。

すぐさま彼の後ろへ。
彼は慣れてる&「医療費なんて絶対払いたくない!病院行ってたまるか!」という根性で、犬にがんをとばす。
とばす、とばす……とばす……!!
勝った!

ずっと目をそらさず、”やんのかコラ” 状態で睨み続けると勝てるらしい。
昔、彼が一人でインドに行った時に犬に囲まれた時はパンチで勝ったそうだ。

日本の飼い犬でも大きい子は苦手な私には、本当に厳しい犬事情。
怖かった…。でも怪我しなくてよかった。

そんな怖い思いをしながら歩きに歩いて、船で行く予定だったチャイワタラーナムにたどり着いた。
 
他の行こうと思ってたお寺には行けなかったけど、船代がういたと思えばまあOK!
足の指を蟻に噛まれてブルーになってたのも、チャイワタラーナムの素晴らしさで吹き飛んだ。

帰りは暑さと疲れと距離の限界で、さすがに歩きは無理。
でもトゥクトゥクは100バーツはする…。
というタイミングでバス発見!

なんと、あんなに死にそうになって歩いた距離を、二人で20バーツで帰れた〜!

途中で日射病になりかけたけど、バイクに乗らなかったから、最後に助けてもらえたのかも。
良かった。

最後の夜は、宿のロビーでいろんな人とおしゃべり。
長期で旅してる人たちは、ほんとに力が抜けてて、ふわ~っとしてる。

「いや〜何してたんすかね、まあ良かったですわ~」
「気づいたら1ヶ月いて、ちょっとペース上げないと〜あはは」
みたいな。

私もそうなれるのかな。

蚊に刺されて痒かったのもあって、おしゃべりはお開きに。
草履を履いて部屋に戻ろうとしたら、宿の子どもなのか、ちびっこアルバイトくんがライトを持ってエスコートしてくれた!

「コープンカー」とお礼を言うと、ハニカミ笑い。
めっちゃかわいかった〜!
もっとちびっこと交流しておけばよかったな。
この日蟻に足の指を噛まれた時、蟻とはわからず、なんか噛まれたー!!!って怖くて号泣した記憶なのだけど、号泣したことはこの時の日記には書いていなくて、記憶に残っていることを記録に残したいと思うとは限らないんだなぁとなんだか面白かった。

物陰から出てきた犬たちはバイオハザードに出てきそうな、見るからに悪者そうな顔をしていて、今でも鮮明に覚えている。
ここで噛まれたら終わり…そんな中、しっかり戦って勝ってくれるあたり、さすがバックパッカー慣れしているなと思う。

この後も何度が動物と戦うことになるし、町中の犬からよそ者扱いで目をつけられる、みたいなことも起きる。
人にも何度も騙されそうになったけれど、私が出会った人たちは、悪い人だから騙す、というわけではなく、騙せそうだから騙しているだけだし、そうするかしないかは、やりとりの中で決まっていくんだろうな、という感覚があった。

でも動物は、その交渉の余地がないから、人より動物の方がずっと怖かった。
この文章を書いていて、道を歩くだけでもずっと気を張っているような感覚が蘇ってきた。

無防備すぎる今、当時の振り返りを通して、少しこの感覚を思い出していきたい。

明日の日記はこちらに続く

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