12-25.12.03『吹っ飛ぶ子ども、シンギングボールの癒し、渡らざるをえないゴミ溜めリバー。日帰りの代償。混沌の一日』

旅のエッセイ
このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。

12-25.12.03『吹っ飛ぶ子ども、シンギングボールの癒し、渡らざるをえないゴミ溜めリバー。日帰りの代償。混沌の一日』

チェンナイは観光できるようなところもないし、Wi-Fi使えないし、彼は怪しげな銅像をもう少し買いたい、との事で近郊のマハーバリプラムに行こうかやめようか朝から考える。

昨日の夜めちゃくちゃ身体が重く、身体が熱く、喉が痛く、完全に風邪っぴきだったのだ。

朝起きたら喉の痛みだけになっていたものの、ここで無理して良いものか、うーん。
と悩んでいると、

「俺だったら、の話はしない方がいいかもしれないけど、俺だったら薬飲んで行くね!」

と彼。



そうか、今日行きたいんだね。
よし分かった行くよ。

宿を出ると辺りは水浸し。昨夜の雨で大きな水たまりが大量にできている。
宿を出て50mもしないうちに彼に足を踏まれて足は真っ黒に。

(~_~;)
いきなりやる気ダウン。

チェンナイからマハーバリプラムまではバスで1時間45分と地球の歩き方には書いてあるけれど、まず長距離バススタンドまでの移動が一苦労。
エグモア駅前のバス停から27Bのバスで終点、って書いてあるけど、どうみても駅前は一通。
私たちがチェンナイに来た時の方向からくるバスしか走っていない。

循環バスなのかな、と信じて27Bのバスに乗り込む。
朝9時はまだ通勤時間のようで混み混み。
やっと座れた!
というところで料金回収のおっちゃんに行き先を告げると、

「逆のバスだ!!」

! やっぱり!!

ここはどこ…という場所で飛び降り、逆車線でバス停を探す。
探している間に27Bのバスに2回もぬかれる。
止まってくれ~の願いも虚しく小さくなっていくバス。

うぅ…

やっとバス停を見つけるも2回もぬかれた後。なかなか来ない。
となりの道端でお花の髪飾りを売っている。
買っている人をみていると、30ルピーでそんなに! という量のお花が買えている。
違うお店とはいえ、昨日20ルピーで50センチしかもらえなかった、私…と余計しゅんとなる。

気を取り直してバスを待つ。
やっと拾えて長距離バススタンドについた頃にはなんと10時半。
1時間半もチェンナイ内でグルグル。
はぁ…先が思いやられる。

やっとこさマハーバリプラムを通るというバスに乗り込み眠りにつく。
1時間ほどうつらうつらしたのち目覚めてびっくり。
看板の番地を見るとまだチェンナイ。
どんだけ広いんだチェンナイ。

斜め後ろの子どもがお腹を出して寝ている様子が可愛い。
椅子が大きく見える。
隣のパパも同じく眠りについている。

なかなかチェンナイを出ないので不安になって標識をみていると、マハーバリプラムまであと33キロの文字。
あと30分はかかるのか…
と思ったその時、バス急停止!!

とっさに前のバーをつかむ彼と私。

子どもの泣き声。

見ると吹っ飛んだらしく、私の横辺りにビタッとうつ伏せになっている。
駆け寄るパパ。
すぐに泣き止むこども。
そしてまた眠りにつく。
添乗員と運転手も特に気にも留めない様子。



ってすごいね (笑)

日本だったら一悶着ありそうな出来事だけど、こんなことは何事でもないのだ。

予定よりも遅くなったものの、無事マハーバリプラムに到着。
Wi-Fiの使えるレストランに行くも、停電中で使えず、しかも何時に停電が復活するか分からないとの事。
私たちがいた時にはある程度計画的に停電を行っていたようだったのに。
Wi-Fi使えなかったら頑張って来た甲斐なし。

食後は整体師の彼が以前施術をさせて頂いたドーサさんのお店へ。
私たちを見つけるなりすぐに店へと招き入れて下さる。

彼がこの前の施術の続きをしたのち、ドーサさんも気功のような施術をして下さる。
特によかったのはシンギングボールを使っての施術。

お腹にシンギングボールを乗せて音を鳴らす。すると身体に波動が伝わり筋肉が緩んでいくのがわかる。
昨晩ひどい生理痛で苦しんでいて、特にその事は伝えていなかったのだけど、偶然にも生理痛にもすごくいいとのこと。今日はしっかり寝られると良いのだけど。

途中でドーサさんのお店にサリーを着た男の人が。
ドーサさんがお金を渡すと、頭に手をぽんとあてていった。
ドーサさんの説明いわく、彼らは神の化身だが、仕事がない。彼らにお金をあげて頭に触れてもらうとカルマがよくなるとのこと。

こういう話をせっかく伺えるときに、もっと英語が話せればきちんと理解できるし、質問もできるのに、と思う。
前に電車に同じようにサリーを着た男の人が来た時は、手をパンパン叩いてカツアゲのごとくお金を巻き上げていたように見えたんだけど、そういうことでもなかったのかな。

ドーサさんに一度別れを告げお買い物。
彼の銅像コレクションはどんだけ増えるんだろう…。
銅像を見たらパシミナも見ていけと言われ、見ることに。
買う気はなかったのにあれやこれやといろいろ教えてくれて。
少しだけパシミナに詳しくなった。
ただここでかなりの時間ロス。

停電も終わったようなので再度Wi-Fiを使うためにレストランへ。
彼の背中が破けた洋服を見て初めてツッコミをいれてきたレストランのおっちゃん。

「おい! 穴開いてるぞ!! 替えはないのか?!」

「穴は開いているがまだ着れる。もう一つのシャツも穴が開いてる」と彼がいうと驚いていた(笑)
いつもは穴があいていてもファッションと思われることが多いのに、初めてツッコミをいれてくれて新鮮。

銅像を買ったお店のおっちゃんが、雨がひどくなるとバスが止まるからあまり遅くならない方がいい、と教えてくれた。
おっちゃんの言うとおり雨が降ってきてしまった。

無事に帰れるのかな。
なんとかWi-Fiはできたものの、雨は止む気配はない。
弱くなったところを見計らってレストランをあとにするも、ドーサさんに別れを告げたのち、どんどん強くなってくる雨。

バススタンドも完全に雨がしのげるような場所ではなく、すでに服から肌へと雨の冷たさが伝わってきている。
こんな時に見つけたチェンナイ行のバスがエアコンバス…。
乗ったら絶対風邪悪化。
エアコンバスは見送り他のバスを待つ。

なんとか乗り込んだチェンナイ行のバス。
ただ、チェンナイはチェンナイでも、思っていた場所へはつかないようで、乗り継ぎが必要らしい。
広いチェンナイのいったいどこに着くんだろう。

どんどんひどくなる雨。

道は川のようになり、バスが通ると波ができて、道端の商店に波が押し寄せている。
無事に帰れるのだろうか…。

「ここで乗り継ぎだ! 23Cのバスにのれ!」

と親切に教えてくれてバススタンドに着いてびっくり。

バススタンド、水没してる(苦笑)

バススタンド内はもはや池と化し、中には入れない。
みんな入り口でバスの出待ち。
降り続く雨。
教えてもらった23Cのバスが見えているものの、一向に入り口に向かってくる気配はなく、2.30分濡れながらバスを待つ。

痺れを切らして尋ねて見ると、私たちの行きたいエグモア行のバスは23Cの一本しかないので、セントラル駅で乗り換えた方が早いとのこと。
また乗り換え…。
セントラル行のバスに乗っているうちにやっと雨が弱まってくる。

ベンガル湾沿いは今が雨季。最近雨は長いことご無沙汰だったから、傘なんて持ち歩いていなかった事を反省。
でもなんとかたどり着けそうでよかった…

と思ったのもつかの間。試練はまだ終わってはいなかった。

セントラル駅で降りるも、どのバスがエグモアまで行くのか分からず、またインド人に尋ねて見ると、電車の方が早い、と親切に場所まで教えてくれた。

でもそこにあったのは川(笑)

川の中をザブザブと歩き、人の群れが駅からこちらへと押し寄せてくる。

え…ここ渡るの…

道端はゴミためだらけ、そしてあちこちで立ちションもしてる。
そんな様子を見ていたら、この川がきれいなハズなんてない事は周知の事実。

渡りたくない…でももうエグモアまでそう遠くはないのにリキシャを使うのはもったいない。
ためしにリキシャに値段を尋ねると50ルピーとのこと、私はそれくらいならば乗ってしまいたかったけれど、スタスタ歩き出した彼。

どこ行くの?

と言うと
「え? 歩いて帰るよ。駅まであの水の中歩くの嫌なんでしょ。」

と冷たい言い草。

なにさぁー!
じゃあいいよ! 川渡るよ!

意を決してザブザブゴミためリバーを渡って駅へと向かう。
足に当たるビニール袋の感触。うぅ。

川ができて店が少し水没しているにも関わらず
「プーリーはいかが?」
とごはんの呼び込み。
明らかにそれどころではないだろう…。

心を無にしてなんとか駅に到着。
エグモアへはたった一駅。なんとか到着。

幸運にももう22時を過ぎていたのに開いていた行きつけの食堂。
遅めの夕食をとり宿に戻ると歯を磨いてその後は記憶がないくらい、吸い込まれるように布団へ。

今日の教訓。
日帰りをしようとしたらあかん。
疲れた…。

—From the present me


ドーサさんにしていただいたシンギングボールでの施術とドーサさんのお店の雰囲気だけ、ぶわぁっと記憶が蘇ってきた。この時間、すごく特別だったな。
シンギングボールは購入して日本にも持ち帰っていたので、時々日本でも彼にやってみてもらったりはしたけれど、ドーサさんのやり方は特別だったな、と思う。
音の響きと一体になって体が調律されていく感じがとても心地よかった。
この日とあの川を歩いての帰宅が同じ日だったとは。

明日の日記はこちらに続く

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