12-25.9.17『19時間の列車移動とインド人との交流。バラナシからハルドワールへ』

旅のエッセイ
このエッセイは、13年前に書いた旅の日記を、現在の私が振り返りながら綴っている連載です。
当時の彼(いまは元夫)と一緒に出た、東南アジアからインドまでの貧乏バックパッカー旅。
あの頃の自分に、今の自分の言葉を重ねていくような、ふたつの時間をめぐる記録です。

12-25.9.17『19時間の列車移動とインド人との交流。バラナシからハルドワールへ』

私にはピンとこなかったバラナシをついに発つ。
それでもなんだかんだ毎日の雨で移動するにも腰も重く、長居してしまった。

今日も明け方から生憎の雨で、ついに一度もガンガーから昇る日の出を見られなかったことが唯一の心残り。

出発の日はいつもそわそわしてしまい、早く起こしすぎた彼の機嫌が悪いが、天気は機嫌を治してくれたようで、幸いにも宿を出る時には雨は止んでいた。

お世話になった宿の久美子さんとシャンティさんに別れを告げ、メインロードへ。
彼が拾ったのはオートではなく人力のリキシャ。
リキシャはかなり椅子がせまい。
本当にここにこの大荷物と人間二人が乗るのか?

駅まで60ルピーで交渉成立したものの、座席にしっかり座れる十分な幅がないので腰が痛いし、変に荷物を動かそうとしてバランス崩して横転するのも怖くて (リキシャはそれほど心許ない…) 腰を痛めた体勢のままじっとしているしかなかった。

文句をぶーたれていると、「あれもやだこれもやだって、あるものでどうにかしようとしろ」と言うような事を彼におこられる。

確かにもっともな意見だし、それはその通りなのだけど、
時々、なんでたった数十円をケチるためにこんなに辛い思いをしなくてはいけないのだろうと悲しくなる事がある。

今はまだ目的にたどり着いていないからなおさら。目的のために我慢する、とか、これにいくらかかるから今これを我慢しなくては…と、はっきりと先が見える我慢ならわかるけれど、それとはまた別の我慢は、時に心身ともにこたえるものがある。

今日の電車移動は19時間という長丁場。電車は定時に出発。
到着は明け方3時半の予定。

昼までは空いていた車内も次第に人が増えてくる。
私は紐を編んで暇をつぶす。

紐を編んでいる事に興味をもってくれたインド人と少しおしゃべり。
ヒンディー語オンリーだからジェスチャーのみで会話。

電車で売っている食べ物は食べない方が無難、と聞いていて警戒していたけれど、19時間ともなればそういうわけにもいかず、パコラ(天ぷらのようなお菓子)と落花生を購入。

私、多分落花生を割って食べるの初めてなのだけど、美味しいね、これ!くせになりそう。
ピーナツは栄養価高いし、これから移動の時の必需品になるかも。

途中の駅でさらにたくさんの人が乗ってくる。
沢木耕太郎さんの小説『深夜特急』を読んで暇をつぶしていると、さっき話しかけてくれたインド人が、周りのインド人に、この子は日本人で、さっき紐を編んでた。みたいなことを言ったようで、何やらインド人のおばちゃんたちにすごくちやほやしてもらって(笑)

一緒に写真を撮ろう撮ろうと色んな席に招かれて、みんなヒンディーオンリーだから何を話してくれているのかはよく分からないけど、笑顔とジェスチャーで素敵な時間を過ごす。

他の席からもインド人の女性が集まってきて、ネパーリーか?と聞かれたり (これ、かなり嬉しい♬)
結婚してるのか?子供はいるのか?などジェスチャーでやりとり。
私やっぱりこういうコミュニケーションが好きだわ。

ほんとはヒンディーで話せたら一番楽しいのだろうけど、中途半端に英語で通訳できる人がいるより、
ほんとに些細なことを一生懸命ジェスチャーで伝え合うのが好き。

笑顔で握手してバイバイ。

席に戻り深夜特急の続きを読んでいると、ちょうどインドをぬけたあたりのくだりで、無感動になっている感じとか、建造物より人を見る方が好きだとか、共感できる部分も多くて読みふける。

今やっと19時。あとは寝て起きたらハルドワールだ!

—From the present me


19時間というと日本からイタリア並みの時間。それにも関わらずかなりさらっと楽しく時間が過ぎていることに驚いた。
私が対して英語が喋れないので、どうせなら相手も英語が喋れずに、それでもなんとかコミュニケーションを取ろうとしてジェスチャーしている方が気楽で楽しい。
日本にいてわざわざ外国人に話しかけるということはしないけれど、私はこうして話しかけてもらえると嬉しかったことを思い出した。
日本だと日本人同士も急に知らない人に声をかけるということがどうしてもしづらい。
欧米などではむしろ、声をかけることで「危険な人物ではない」というコミュニケーションになっているという話を聞いたこともある。
文化の違いで全然コミュニケーションが違う。
インドの場合、シンプルに興味で話しかけてくれていた感じがして、とても嬉しかった。

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